新しい理想的な矯正法
MSE矯正

MSE矯正とは、成人の固まった上顎でも骨格レベルの拡大が可能となった矯正治療法です。
歯への大きな負担をかけず、外科手術や抜歯を回避できる場合が増えたことから、今後さらに注目される治療法です。

MSE矯正とは?

MSE矯正とは

MSE(Maxillary Skeletal Expander)は、UCLAのMoon教授が開発した、上顎の骨自体を広げる先進的な矯正治療法です。英語名「Maxillary Skeletal Expander(上顎骨骨格性拡大装置)」を略したもので、MARPE(Miniscrew Assisted Rapid Palatal Expansion)と呼ばれることもあります。

従来は子ども向けだった急速拡大装置(RPE)に対し、MSEはミニスクリューを上顎の骨に直接埋め込むため、成人の硬くなった上顎でも効率的に拡大可能になりました。歯を無理に傾斜させないので、抜歯が不要なケースが増え、後戻りもしにくいといわれています。

さらに、骨を土台に拡大するため、治療期間の短縮にもつながり、多くの患者さんが負担を軽減して矯正治療を進めやすくなるメリットがあるのです。

上顎は「左右2つの骨」でできている

上顎の天井(口蓋)は、実は左右2つの骨が合わさって形成されています。その中央には、正中口蓋縫合(せいちゅうこうがいほうごう)と呼ばれる“骨のつなぎ目”があり、子どもの頃はここが完全に癒合しておらず、柔軟性があります。
しかし成長するにつれ、縫合部に新しい骨が作られて徐々に固まっていきます。

子どもの頃

左右の骨の結合がまだ不完全で、柔らかい。

大人になると

成長によって骨がしっかりくっつき、縫合が固まりやすい。

MSE矯正の仕組み

MSE矯正の仕組み

1.ミニスクリューを4本埋入して
“骨”を支点に

MSE矯正では、上顎の天井部分(口蓋)の正中口蓋縫合という、左右の骨が合わさる“つなぎ目”を挟むように、左右2本ずつ、合計4本の小さなネジ(ミニスクリュー)を骨に埋め込みます。

文章だけではよく分からないかと思いますので、実際の症例写真を用いて説明します。

装置をはめた直後

上顎の天井部分(口蓋)に4本のミニスクリューを打ち込み、徐々に間隔を広げていきます。
4つの赤丸がミニスクリューを打ち込んでいる箇所で、MSEを固定するために歯にも装置を被せています。

上顎が拡大した後

MSE装置により上顎が広がり、左右の前歯の間に隙間を作り出すことができました。
通常この隙間を作り出すために、上下左右から1本ずつ歯を抜くことがありますが、上顎自体を拡大したので、高い確率で抜歯を回避することができます。

なぜ、ネジ(ミニスクリュー)を4本打ち込むのか?

骨を左右からしっかりと固定するために、4本のミニスクリューを使用します。単数・複数のネジに比べて安定性が高く、スクリューが抜けてしまうリスクを減らせます。

歯ではなく骨に打つメリット

従来の急速拡大装置(RPE)は歯に装置を固定するため、力がまず歯にかかってから骨に伝わります。その分、歯が傾斜しやすかったり、成長期を過ぎた硬い骨には十分な影響を及ぼせなかったりする問題がありました。
しかしMSEでは“骨そのもの”を支点にするため、直接的に骨格に力を加えられるのが大きな特徴です。

2.ネジを回して左右の骨を少しずつ離す

埋め込んだミニスクリューに装置(MSE本体)を連結し、中央部のネジを回すことで、左右の骨を徐々に離す力が働きます。

大人でもなぜ広がるの?

大人では正中口蓋縫合が固まりかけていることが多いですが、強固に埋め込んだミニスクリューがしっかりと支点となるため、骨自体を左右に引き離す力を効率よく発揮できます。

拡大期間はどれくらい?

一般的には数週間~1か月程度かけて、1日1回・決められた回数分だけネジを回し、少しずつ骨を拡げていきます。短期間で急激に拡げるわけではないので、痛みが強すぎたり、骨に過度な負担がかかったりするリスクを抑えられます。

3.縫合部の隙間に新しい骨が形成される

左右の骨が離れて隙間ができると、そこには新しい骨組織が生成されるため、骨ごと拡大した安定した状態を作り出せます。

歯だけでなく骨格レベルで拡大

小児で用いるRPE方法だと、どうしても歯が傾斜して広がったように見えるケースが多く、根本的な骨の拡大は限定的でした。MSE矯正では骨自体が広がるので、歯根や歯茎への負担が減り、噛み合わせ全体を良好に保ちやすいメリットがあります。

抜歯の必要性を減らす

骨が広がった結果、生える(または既に生えている)歯列のスペースが増えるため、従来では抜歯しないと並びきれないと思われていた症例でも、抜歯せずに矯正が進められる可能性が高まります

4.従来は「手術」が必要だった
大人の上顎拡大

成長期を過ぎた大人の上顎は、正中口蓋縫合がほぼ固まっています。そのため、小児矯正で扱うRPE(Rapid Palatal Expander)のように歯を支点に拡げるだけでは骨まで動かせず、過去には外科的に上顎を切って骨を広げる手術(サージェリー・ファーストなど)が必要な場合が多くありました。

MSEがもたらす大きな変化

MSE矯正の登場により、骨を直接拡大する“骨格性のアプローチ”が大人にも可能になったため、外科手術を回避できる症例が大幅に増えたのです。

治療が簡単になったわけではない

もちろん、ミニスクリュー埋入や拡大時のケアなど、専門的な技術や手術が必要です。ただし、従来の“大がかりな顎の骨切り手術”に比べれば身体的・経済的負担が軽減される可能性が高く、患者さんにとって大きなメリットといえます。

大人こそ恩恵が大きいMSE矯正

大人こそ恩恵が大きいMSE矯正
  1. 噛み合わせの改善 骨格から上顎を広げるので、歯列アーチを理想的な形へ整えやすく、上下の噛み合わせバランスが向上します。
  2. 呼吸や睡眠への影響 上顎の構造と鼻腔の広さは関連があるため、拡大によって鼻呼吸がしやすくなる、いびきの軽減が期待できるケースもあります。
  3. 成人でも治療期間を短縮できる可能性 成長期の子どもほど急速には広がりませんが、歯根を無理に動かす方法よりスムーズにスペースを確保できるため、結果的に矯正全体の期間を短縮できることもあります。

MSE矯正についてまとめると

MSE矯正は、“歯に頼らず、骨をしっかりと支点にして拡大する”ことで、大人の固まった上顎を効率よく広げる革新的な方法です。

  • 4本のミニスクリューで安定した土台を作り、左右の骨を離す
  • 離れた隙間を新しい骨が埋めるため、骨格レベルでの拡大を実現
  • 外科手術を回避しやすく、抜歯リスクも軽減

かつては“上顎が狭い大人は大がかりな手術が必要”といわれてきましたが、MSEのおかげで、患者さんの身体的・経済的負担を大きく抑えつつ、確かな上顎拡大が可能になりました。

MSE矯正のメリット

MSE矯正のメリット
  1. 大人でも拡大できる

    成長期を過ぎて骨が固まった方でも、ミニスクリューを活用して骨格レベルで拡大が可能。歯の傾斜を最小限に抑えられます。

  2. 抜歯せずに矯正できるケースが増える

    上顎をしっかり広げられることで、歯を並べるスペースが確保しやすくなり、抜歯を回避しやすくなります。

  3. 後戻りが起こりにくい

    骨そのものが拡大されるため、治療後も歯列が安定しやすいといわれています。

  4. 手術の負担を軽減

    以前なら外科手術が前提だった大きな上顎拡大も、**比較的簡単な処置(ミニスクリュー埋入)**のみで対応できる可能性が高まります。

MSE矯正の流れ

MSE矯正の流れ
  1. 初診・検査レントゲンやCTなどで上顎の骨や歯並びを精密に調べ、MSEに適応できるかどうかを診断します。
  2. 装置製作・埋入計画ミニスクリューを打ち込む位置や角度を綿密に計画。患者さん専用の拡大装置を作製します。
  3. ミニスクリュー埋入 & 装置装着局所麻酔下で上顎にミニスクリューを埋入し、拡大装置を装着。術後は多少の痛みや腫れを感じる場合もありますが、処方薬やケアで落ち着くことがほとんどです。
  4. 拡大調整指定されたペース(例:1日1回)で拡大装置のネジを回し、数週間~1か月ほどかけて上顎をゆっくりと広げます。定期的に通院して進捗を確認します。
  5. 保定 & 仕上げ矯正十分に拡大されたら、一定期間そのまま装置を保持し、離れた骨の隙間が固まるのを待ちます。必要に応じてワイヤー矯正やマウスピース矯正で最終的に歯並びを整え、リテーナーで保持します。

〜まとめ〜
要点だけを整理

MSE矯正は、UCLAのMoon教授が開発した画期的な上顎拡大装置で、成人の固まった上顎でも骨格レベルの拡大が可能となりました。歯への大きな負担をかけず、外科手術や抜歯を回避できる場合が増えたことから、今後さらに注目される治療法です。

  • 歯並びのスペース不足で困っている
  • 抜歯はできるだけ避けたい
  • 外科手術なしで上顎を広げたい
  • 後戻りのリスクを減らしたい

そんな方は、一度MSE矯正の可能性をチェックしてみるのはいかがでしょうか。
専門医が精密検査を行い、最適な治療プランをご提案いたします。骨レベルのアプローチで、より理想的な歯並び・噛み合わせを目指しましょう。

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